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アメリカデザイン留学記

MIT IDMのデザインプロジェクト01

MIT IDMでは、秋学期に2つのデザインプロジェクトを授業と同時並行で進行しました。
まずは、1つ目のプロジェクトについて紹介したいと思います。

 
Bloom & Dustpan Re-Design Project

ホウキとチリトリのデザインプロジェクトです。マーケットリサーチ(約2週間)とプロトタイピング(約2週間)を個人で取り組みます。位置づけとしては、秋学期後半のプロジェクトのための準備運動的な短期プロジェクトです。


1. マーケットリサーチ

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他社製品調査
ユーザーインタビュー
ユーザー観察
ニーズリスト作成、及び優先順位付け

 

2. プロトタイピング

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イデア出し、アイデア選抜 (最低30個から5個を選抜)
スケッチモデル作成、検証(スチレンボードなどでの簡易モデル)
最終プロトタイプ作成、検証

 

全体としては、前半のユーザーインタビューとユーザー観察からニーズを抽出する部分、そしてユーザーとの関係づくりに重点が置かれている印象でした。

 

「明日から外に出て色んな人に話を聞いてきて。」

 

えぇ、知ってます、知ってますとも。デザインプロセスの中でユーザー調査って大事ですもんね。ただ、僕のような英語がまだまだの留学生にとって、これが本当につらい。。。レストランの店員や道端を歩いている家族などに突撃インタビューをして、時には断られながら(怒られたりもしながら)もニーズを探ります。少しでもスムーズに会話できるようにホウキとチリトリのサンプルを持ち歩いていたのですが、それを持ったアジア人がボストンの街を徘徊している姿は、そうとう奇妙だったと思います(笑)家族で住んでいる友達にお願いして家庭訪問もさせてもらいました。

今考えれば、他のメンバーと2人で協力してインタビューした方が断然楽だったと思うのですが、その時はなんとなく1人でやらなきゃいけない気がして、かなりの時間を費やしてしまいました。

 

企業で働いていた時にもユーザー調査に関わることは多かったのですが、それとは全く異なるサバイバル体験でした。実際にやってみて「お金や時間をかけなくても出来る調査は結構あるのかな?」と思ったりしました。とりあえず外に出て、とりあえず聞いてみる。難しそうだけど、大切な姿勢なんじゃないかと思います。

 

調査の中でクリスというMITの清掃スタッフに出会い、最終的には「プロ清掃スタッフ」をターゲットユーザに決めました。彼は6年ほどMITで働いている若手清掃スタッフです。ホウキとチリトリについて尋ねると、30分くらいかけて丁寧にトイレ掃除のプロセス(ホウキとチリトリ関係ないプロセスも含む)を説明してくれて、自分がいかにトイレ掃除に誇りとプロ意識を持って取り組んでいるかを熱弁してくれました。ターゲットユーザーを決めた後に、MITの掃除部門部門長にも会いに行きました。彼や彼の部下へのインタビューの中で、短いホウキはハンドリングが簡単で最も大事な掃除用用具の1つなんだけど、力が伝わりづらく、腰を曲げないと使えないので体への負荷が蓄積しやすいことが分かりました。結局プロジェクトの最終報告まで彼らとディスカッションをしつつ、短いホウキのプロトタイプを作ることになりました。

 

イデアを選抜する段階では、以下の3つの軸で各アイデアをスコアリングをしました。

 

Desirability:ユーザーの視点でニーズにマッチしているか?

Feasibility:エンジニアリングの視点で実現可能か?

Viability:ビジネスの視点で利益を生むことができるか?

 

当たり前のことようですが、実際に数値化したのは初めてだったかもしれません。僕の場合は、MITの掃除部門の人たちにも意見を聞きつつスコアリングしました。この辺りの手法については、同時並行で進行しているレクチャーで学んだ方法論を、プロジェクトで実際に使えるようにプログラムが組まれています。

 

そんなこんなで、時には深夜0時から4時まで掃除の手伝いをして腕が筋肉痛になったりと、どっぷりユーザーに入り込む経験ができました。(プロトタイプを実際に使ってもらったりしていました。)

 

ちなみに他のメンバーは、「映画館のためのホウキ」とか「美容院のためのチリトリ」などなど、とても面白いテーマに取り組んでいて、それも興味深かったです。目のつけどころが素敵でした。


プロジェクト前半は、正直本当に辛かったです(泣)
諦めずにターゲットユーザーとの関係を築いていく中で、今後のプロジェクトに必要な基礎体力(筋肉?)づくりが出来たんじゃないかと思っています。